「FIBAワールドカップ2019」予選ラウンド最終戦は、FIBAランキング1位のアメリカに現在のAKATSUKI FIVE 男子日本代表の力を腕試し。しかし、「第1クォーターからゲームを支配され、それに対抗できずにチーム内にフラストレーションが溜まり、いつものプレーができないまま終わってしまいました」とフリオ・ラマスヘッドコーチが言うように、45-98と53点差で完敗。渡邊雄太選手(メンフィスグリズリーズ)も、「言い訳はありません。これが我々の今の実力です。とにかく前を向いて、次の試合に向かっていかなければならないです」と17-32位決定ラウンドへ気持ちを切り替えるしかありません。
大歓声で迎えられたアメリカは、いきなりケンバ・ウォーカー選手(シャーロットホーネッツ)のバスケットカウントからスタート。そこから怒濤のオフェンスで一気に点差が開いていきます。日本が初得点を挙げたのは開始4分40秒、渡邊選手のフリースローでした。これまでの2戦で平均二桁得点を挙げていた日本の『BIG3』でしたが、アメリカ戦に関しては渡邊選手が9点、八村塁選手(ワシントンウィザーズ)とニック・ファジーカス選手(川崎ブレイブサンダース)は4点に抑えられたことも、アメリカの強さを物語っています。
その中で気を吐いたのが、NBA入りを目指す馬場雄大選手(アルバルク東京)でした。「チームとしてはプレッシャーに負けて、自分たちが目指すバスケットボールスタイルができなかったです」と反省点を挙げましたが、個人についての感想を聞くと一転します。
「得点云々は関係なく、貴重な経験であり、アグレッシブに行ったことと、40分間を大切に戦った結果だと思っています。チームとして戦わなければいけないのは分かっていますが、パスを考えて後手に回るのがこのような舞台ではしてはいけないことだと思いました。先陣切って走り回ったし、自分が打ちたいようにプレーしたことが良い結果につながったと思います」
夢見ていたアメリカとの対戦が実現し、「NBA選手たちを相手にどこまで通用するかを本当に楽しみにしていました」。個々の能力が高く、アグレッシブに1on1を仕掛けてくるNBA選手に対し、「打開する力が自分はあると思っており、そこを信じてプレーしたことがアグレッシブさにつながったかなと思います」と自信を持ってプレーしたことで、チームハイとなる18点、3スティールを挙げる活躍を見せました。
ラマスヘッドコーチは「今日の馬場のプレー内容は評価できるものです。アメリカを相手に恐れることなく挑んだことで、我々のオフェンスの核となってくれました」と言えば、渡邊選手も「雄大は明らかに自信を持ってプレーし、良い活躍をしました。今年のNBAサマーリーグに参加したことが彼に良い影響を与えたと思います」と労います。同じ富山県出身であり、中学の先輩の活躍に「すごいうれしいです。NBAなどのコーチたちも見ていたのですごく良いチャンスになったと思います。それはすごく良かったことです」と八村選手も、自分のことのように喜んでいました。
出場時間内でのチームの得失点差から個人を評価する『+/-』を見ても、馬場選手は約27分間の出場でー29と、渡邊選手のー49や八村選手のー48よりも大幅に低く、自ら得点を挙げて活躍したことがボックススコアにも表れています。
今大会はじめて出場機会を得た竹内公輔選手(宇都宮ブレックス)は、「相手は身長が高く、身体も大きく、アスレティック能力では適わないので、とにかくコンタクトし続けて、それでも得点を獲られたら仕方ないという気持ちで試合に入りました」。その言葉どおり、アメリカのオフェンスを狂わせ、チームハイとなる6本のリバウンドを獲って存在感を示します。
日本開催された2006年に続き、2度目のFIBAワールドカップ(当時は世界選手権)の舞台に立った竹内選手。あのときも優勝したスペインと予選ラウンドで対戦しましたが、「何もできなかったというか、ただ負けただけでした。でも今回はそれなりに得るものもあったので、順位決定戦でひとつでも勝って帰りたいです」とプラスに受け止めています。「相手のビッグマンでも激しいディナイをしてきて、パスをしたらボールが引っかけられるかなという恐怖ではないですが、ディフェンスの圧を40分間ずっと感じました」とNBA選手のすごさを肌で感じました。「その圧に対して、自分たちも少しずつでも慣れていかなければならないし、コンタクトの大事さが分かったので、順位決定戦ではもっとそこを徹底していきたいです」と点差が開いてもアメリカが最後まで全力で戦ってきたからこそ、得るものも大きかったわけです。
53点差の大敗からも学ぶべきことはたくさんありました。竹内選手は、「これまで強化してきた方向性は間違っていないことが分かりました。今大会はまだ結果は出ていませんが、世界1位の相手と戦えるチャンスをもらえたことが良かったです」とこの経験を生かし、残る2戦で結果を求めていきます。大きな自信をつかんだ馬場選手も、「何かきっかけをつかめれば、経験を踏めることができれば、絶対に戦えると感じています。ここからがスタートです」と日本バスケは大きな一歩を踏み出しました。
予選ラウンドは3連敗に終わりましたが、FIBAワールドカップはまだまだ続きます。舞台を東莞市に移し、17-32位決定ラウンドの戦いが続きます。次戦は9月7日(土)16:30より、ニュージーランドと対戦。国内での強化試合では1勝1敗であり、この大舞台で決着をつけます。
■17-32位決定ラウンド スケジュール(日本時間) 9月7日(土)16:30 日本vsニュージーランド 9月9日(月)16:30 日本vsモンテネグロ
■予選グループ結果 【グループA】①ポーランド(3勝)②ベネズエラ(2勝1敗)|③中国(1勝2敗)④コートジボワール(3敗) 【グループB】①アルゼンチン(3勝)②ロシア(2勝1敗)|③ナイジェリア(1勝2敗)④韓国(3敗) 【グループC】①スペイン(3勝)②プエルトリコ(2勝1敗)|③チュニジア(1勝2敗)④イラン(3敗) 【グループD】①セルビア(3勝)②イタリア(2勝1敗)|③アンゴラ(1勝2敗)④フィリピン(3敗) 【グループE】①アメリカ(3勝)②チェコ(2勝1敗)|③トルコ(1勝2敗)④日本(3敗) 【グループF】①ブラジル(3勝)②ギリシャ(2勝1敗)|③ニュージーランド(1勝2敗)④モンテネグロ(3敗) 【グループG】①フランス(3勝)②ドミニカ共和国(2勝1敗)|③ドイツ(1勝2敗)④ヨルダン(3敗) 【グループH】①オーストラリア(3勝)②リトアニア(2勝1敗)|③カナダ(1勝2敗)④セネガル(3敗)
■2次ラウンド 【グループI】アルゼンチン、ポーランド、ベネズエラ、ロシア 【グループJ】セルビア、スペイン、イタリア、プエルトリコ 【グループK】アメリカ、ブラジル、ギリシャ、チェコ 【グループL】フランス、オーストラリア、リトアニア、ドミニカ共和国
■17-32位決定ラウンド 【グループM】ナイジェリア、中国、コートジボワール、韓国 【グループN】チュニジア、アンゴラ、イラン、フィリピン 【グループO】トルコ、ニュージーランド、モンテネグロ、日本 【グループP】ドイツ、カナダ、ヨルダン、セネガル